【ミズノ】陸上スパイクXシリーズの違い│クロノインクスとの比較も
ミズノの短距離用スパイクであるXシリーズの特徴・違いを紹介します。同じ短距離スパイクのクロノインクス9との比較も行います。
目次
Xシリーズの特徴
多くの剛性パターンが作成可能
XブラストNeoアウトソール:商品画像は jpn.mizuno.com より引用
Xシリーズの特徴はアウトソールの2種類のプレートにあります。特許に従って、透明な方を第1部材、黒い方を第2部材と呼びます。
第2部材がプレートの部分で、第1部材よりも硬いことを特徴としています。ミズノ公式HPでは、第2部材のことを高硬度樹脂と呼んでいます。
Xシリーズでは、この第2部材の硬さや形状を変えることにより、屈曲剛性やねじれ剛性を制御することができます。
つまり、競技特性やランナーのレベルに応じて、オーダーシューズのように無数のパターンのアウトソールが作成可能となります。
プレートの製造方法
画像の引用元:特許6903088(図3,5,7) 本サイトで着色済
Xシリーズのプレートの製造方法として、特許第6903088号が取得されています。特許本文に沿って、プレートの製造方法を解説します(少し簡素化しています)。
まずは、透明な第1部材をあらかじめ成形しておきます(①)。第1部材は、XブラストシリーズとXレーザーシリーズで形状が異なります。
第1部材の中から目的の形状を選択し、金型内にセットします(②)。金型はXブラストシリーズとXレーザーシリーズで共通です。
次に、金型の中に黒色の第2部材を注入し、冷却して固化させることで、第1部材と第2部材が一体化したプレートが完成します(③)。
XブラストとXレーザーの違い
商品画像の引用元:jpn.mizuno.com
スパイクの裏側からプレートを見ると分かりますが、Xブラストの方が硬い黒色の第2部材の体積比率が高いです。
第1部材が透明のため第2部材(黒)がどこに流れているか分かりますが、Xブラストの方が枝部(第1部材の凹部に流れ込んだ第2部材)が多いことが分かります。
第2部材の方が硬いので、枝部の数・大きさ・位置を変えることで、屈曲剛性やねじれ剛性を調整することができます。
Xブラストは枝部が6本あり、Xレーザーの4本よりも多いです。つまり、Xブラストの方が剛性(反発力)高く、ショートスプリント(100m~200m)に適しています。
Xレーザーの枝部は4本ですが、Xブラストと比べて内側の2本が少ないことが分かります。この領域の剛性を部分的に小さくすることで、コーナーで曲がりやすい構造としています。このため、適正種目は200m、400m、4×100mR(1走、3走)、4×400mRとなります。
Neo、エリート、ネクストの違い
Neo | エリート | ネクスト | |
---|---|---|---|
定価 | ¥27,500 | ¥24,200 | ¥19,580 |
第2部材 | 硬 | 硬 | 柔 |
レベル | 上級者 | 上~中級者 | 中~初心者 |
スパイクピン | 固定 | 固定 | 取替式 |
シューズのレベルは高い順に、Neo > エリート > ネクストです。ただし、この順に高価になります。
ネクストはプレート(第2部材)が柔らかく、大きな筋力を必要としないため中級者モデルとされています。一方で、Neoとエリートには硬いプレートが採用されています。
さらに、Neoのみプレートとの上にミズノエナジーライトというフォーム材が搭載されています。このため、XブラストNeoは厚底スパイクとも呼ばれています。
ミズノエナジーライトの搭載で反発力はさらに上がりますが、安定性は低下します、このため、周りを硬めのEVAで囲むことで安定性を高めています。
この複雑な構造により、XブラストNeoの重量(27.0cm)は185gと全モデルで一番重くなっています。重量増加のデメリットよりも、反発力が高まったメリットの方が大きいとミズノは考えているはずです。
ピンの固定方法はネクストのみ取替式です。ピンの長さを変えたい場合や、トレーニングで多用する方に最適です。
メリット・デメリット
メリットは、選手のレベルや競技特性に合わせて自由に剛性を変えることができることです。
他のメーカーの短距離スパイクはここまで細分化されていませんが、Xシリーズなら自身の目的に近いモデルがある可能性が高いです。
また、プレート製造用の金型はモデル別に用意する必要がないため、メーカー側にとっては製造コストを抑えることができるメリットがあります。
ただし、金型が共通化されているということは、全モデルで第2部材(プレート)の形状が同一になることを意味します。
つまり、上級者モデルのNeo・エリートと、中級者モデルのネクストのプレートの外形・傾斜が同じになってしまいます。
ミズノはプレートの硬さを変えることによって選手のレベルに合わせていますが、外形・傾斜にも最適な形状があると思います。
Xシリーズでは第1部材と第2部材の配置と割合を変えているだけなので、モデル間の差別化をつけるのが難しいと考えています。
全モデル比較
XブラストNeo
- 定価(税込): ¥27,500
- 重量(27.0cm): 185g
- 推奨種目: 100~200m
- 対象レベル: 上級者
- スパイクピン: 固定
Xシリーズのトップモデルです。唯一ミズノエナジーライトを使用し、安定性を高めるために周りをEVAで囲んでいます。
Xブラストエリート2
- 定価(税込): ¥24,200
- 重量(27.0cm): 165g
- 推奨種目: 100~200m
- 対象レベル: 上~中級者
- スパイクピン: 固定
ショートスプリント用の上級者モデルです。XブラストNeoより反発力は低いですが、厚底スパイクに慣れない方や値段を抑えたい方におすすめです。
Xブラストネクスト2
- 定価(税込): ¥19,580
- 重量(27.0cm): 175g
- 推奨種目: 100~200m
- 対象レベル: 中~初心者
- スパイクピン: 取替式
ショートスプリント用の中級者モデルです。トレーニングで使用する選手が多いからか、AmazonのランキングではXブラストエリート2よりも上位です(2022年7月地点)。
Xレーザーエリート2
- 定価(税込): ¥24,200
- 重量(27.0cm): 165g
- 推奨種目: 200~400m
- 対象レベル: 上~中級者
- スパイクピン: 固定
ロングスプリント用の上級者モデルです。200mを走る場合はXブラストエリートと迷いますが、パワーで押していくならXブラスト、脚への負担を考えるならXレーザーがおすすめです。
Xレーザーネクスト2
- 定価(税込): ¥19,580
- 重量(27.0cm): 175g
- 推奨種目: 200~400m
- 対象レベル: 中~初心者
- スパイクピン: 取替式
ロングスプリント用の中級者モデルです。Xシリーズの中では剛性が低いため、初心者用の土トラック兼用モデルからステップアップしたい方におすすめです。
クロノインクス9との比較
XブラストNeo | クロノインクス9 | |
---|---|---|
定価(税込) | ¥27,500 | ¥28,600 |
重量(27.0cm) | 185g | 150g |
反発力 | かなり高い | 高い |
XシリーズのハイエンドモデルであるXブラストNeoと、長年多くのトップランナーが着用してきたクロノインクス9を比較します。
クロノインクス9の重量はXブラストNeoよりも30g以上軽いです。ただし、反発力はXブラストNeoの方が高く、近年スパイクはエネルギーリターン重視に移行する流れもあります。
ただし、感覚ではクロノインクス9を着用している選手の方が多いです。185gという重さは多くの選手にとって抵抗感がある(ナイキのマックスフライより重い)ことと、XブラストNeoの実績が少ないことが要因だと思います。
ちなみに、2022年の日本選手権200mで優勝した飯塚翔太選手はクロノインクスの厚底版のようなシューズを着用しているように見えます。
なぜXブラストNeoでないのかは分かりませんが、どちらにせよエネルギーリターンを重視した厚底スパイクが主流になる可能性が高いと思います。
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