【全7項目】ガーミンのトレーニングステータスの見方と活用方法を解説 – Unattached Runner
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【全7項目】ガーミンのトレーニングステータスの見方と活用方法を解説

 ガーミンのトレーニングステータスには負荷比・VO2max・HRVステータスなど様々な指標があります。本記事では、各項目の見方・活用方法を解説します。

対応モデル

 2023年11月現在、トレーニングステータス機能があるランニング向けの現行モデルは以下の通りです。

  • Forerunner 965
  • Forerunner 265
  • Forerunner 955
  • Forerunner 255 / 255S
  • Enduro 2

 このように、トレーニングステータス機能はエントリーモデルのForeAthlete 55以外には搭載されています。

 ただしForeAthlete 55はトレーニングステータスはないものの、VO2max・予想タイム、リカバリータイムは搭載されています。

 ガーミンのモデル比較は以下の記事で行っているので、参考にしてみてください。

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トレーニングステータスとは

トレーニングステータス

 トレーニングステータスは短期的・長期的なトレーニングを比較することで、現在のステータスを以下のように表示します。

  • プロダクティブ:トレーニング負荷が最適で、調子が上昇している状態
  • アンプロダクティブ:トレーニング負荷は問題ないが、調子は下降している
  • キープ:トレーニング負荷が最適で、調子が維持できている
  • オーバーリーチ:トレーニング負荷が高すぎるため、休息が必要
  • ディトレーニング:普段よりもトレーニング負荷が低く、パフォーマンスに影響が出始める
  • ピーキング:トレーニングの疲労から回復し、レースに最適な状態
  • リカバリー:高強度のトレーニング後から回復している状態

 このように自身の状態を客観的に把握することができるため、トレーニングメニューの組み立てやオーバーワークの防止などに役立てることができます。

 トレーニングステータスにはVO2max、短期的負荷、HRVステータスなどの項目があり、それぞれを総合的に判断したような指標と考えることができます。

 これらの項目は主に運動強度(ペース)と心拍数を元に判断されるため、GPS・心計計の精度が高いほどトレーニング機能の精度も高くなります。

 心拍数については、1度のトレーニングで正しく測定できていても、最大心拍数の設定がずれているとトレーニング機能の精度は落ちてしまいます。

 デバイス内蔵の光学式心拍計は夏季では高精度に測定できますが、気温が低い時期や速いペースでは測定値が大きくずれることがあります。

トレーニング負荷

距離・ペースが同じトレーニングをしても、心拍数がずれると負荷もずれてしまう

 上の画像は、1日ごとの運動負荷の推移をガーミンコネクトで確認したものです。

 10/16、10/17ともに同じペースで10kmjogを行いましたが、10/17は高強度有酸素に分類されて負荷が4倍ほど高くなっていることが分かります。

 要因は心拍数が大きくずれてしまったためで、10/17は気温が低かったためかジョギングとしては異常に高い心拍数を示していました。

 これにより実際の運動負荷よりも高く推定され、さらに次に紹介するVO2maxも低下してしまい、その後のトレーニングステータスの推定精度も落ちてしまいます。

 このような場合でも精度良く心拍数を測定したい場合は胸ベルト装着型の電気式心拍計の使用がおすすめです。

 以下の記事で光学式心拍計との精度比較を行っているので参考にしてみてください。

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各項目詳細

短期的負荷・負荷比

短期的負荷

 ガーミンはトレーニングの負荷を数値化するために、運動後過剰酸素消費量(EPOC)という指標を用いています。

 運動後は通常時よりも多くの酸素を消費しますが(アフターバーン効果)、EPOCはこの増加量を数値化したものです。

 短期的負荷は過去7日間のEPOCを加重合計したもので、直近のトレーニングほど高い係数が掛けられています。

 短期的負荷には最適な範囲があり、トレーニング量を減らしすぎると効果が薄れ、急激に増やすと怪我のリスクが高まります。

 現在の短期的負荷が適切な範囲にあるかを知るために役立つのが「負荷比」です。

 負荷比は短期的負荷(過去7日間)を長期的負荷(過去28日間)で割った値で、以下のように判定されます。

  • 低い:〜0.7
  • 最適:0.8〜1.4
  • 高い:1.5〜1.9
  • 非常に高い:2.0〜

 レースの調整などで0.8を下回ることは時折ありますが、オーバーワークを避けるために1.4はできるだけ超えないように注意すべきです。

負荷バランス

ガーミン 負荷バランス

 トレーニングにはジョギング、LT走、インターバルなどがありますが、パフォーマンスを最大限に高めるためには適切な割合で実施する必要があります。

 負荷バランスではトレーニングを低強度有酸素・高強度有酸素・無酸素の3つのカテゴリーに分類し、過去4週間のトレーニングが適切な範囲にあるかを確認できます。

 この例では無高強度有酸素カテゴリーが適切な範囲(点線)を大きく下回り、負荷バランスが「高有酸素不足」と表示されています。

 高強度有酸素のトレーニング量の割合が小さすぎるため、LT走・インターバルを増やすなどしてバランスを取る必要があります。

 これらの3つのカテゴリーはさらに以下の7つに細分化され、ペースや心拍数をもとに自動的に判別されています。

無酸素
  • スプリント
  • 無酸素能力
高強度有酸素
  • VO2max
  • ハード
  • テンポ
低強度有酸素
  • ベース
  • リカバリー

 どのトレーニングに分類されたかは、ガーミンコネクトでトレーニング効果をタッチすることで確認することができます。

 負荷バランスは心拍数ゾーンを用いたトレーニングと考え方は同じです。心拍数ゾーンについては以下の記事で詳しく解説しています。

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VO2max

ガーミン VO2max

 VO2max(最大酸素摂取量)は1分間・体重1kgあたりに消費できる酸素の量(mL/kg/min)です。

 VO2maxの推測には主にペース心拍数が使用され、速いペースを余裕を持って(低い心拍数で)走ることができればVO2maxの推定値は高くなります。

 おおよそ走力を反映しているような指標で、VO2maxが高くなれば基本的には予想タイムは速くなります。

 ただし、予想タイムはVO2maxだけでなくもトレーニングデータも考慮に入れて算出されるため、同じVO2maxでも人によって予想タイムは異なります。

 他にも、VO2maxはトレーニングステータス・パフォーマンスコンディション・乳酸閾値などの推定にも使用されます。このため、VO2maxの精度を上げることは重要です。

 VO2maxの精度を高める最も有効な手段は心拍計の精度を高めることです。特に、光学式心拍計の精度が落ちる冬場はVO2maxが低下しやすいです(逆に高くなることもあり得ます)。

 さらに、トレーニングの強度が高くなるほど光学式心拍計の精度は低下します。このため、高精度にVO2maxを推定する場合は胸ベルト型の心拍計の使用をおすすめします。

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HRVステータス

HRVステータス

HRVステータスを表示するには、睡眠中にガーミンを装着することが必須

 HRV(Heart Rate Variability)は心拍の間隔(R-R間隔)の変動を示す用語です。HRVは単に心拍数だけでは分からない、自律神経や生体の調節機能に関する情報を得ることができます。

 HRVの統計的尺度としては、隣り合うR-R間隔の差の二乗平均(RMSSD)が使用されることが多いです。単位はms(1000分の1秒)です。

 一般的には、R-R間隔はリラックス状態ではゆらぎ(変動)があり、疲労時やストレス時は一定の間隔に近づく傾向があることが知られています。

 つまり、身体が回復状態でコンディションが良好なときはHRVは高く、逆に疲労やストレスでバランスが取れていないときはHRVは低くなりやすいです。

 HRVステータスは、大量のHRVデータを統計的に分析することでトレーニング負荷や回復状態を判断します。

 このため、HRVステータスを確認するためには約3週間睡眠中にガーミンを装着しておく必要があります(HRVは1回の睡眠で確認可能です)。

 HRVステータスでは過去7日間のHRV平均を個人のベースラインと比較することで、以下のカテゴリーで表示されます。

  • バランス:トレーニングと回復のバランスが取れている良好な状態
  • アンバランス:ベースラインの範囲を上回っている、または少し下回っている状態
  • 低い:ベースラインを大きく下回っている状態
  • 悪い:ベースラインとは無関係で、同年代の平均から大きく下回っている
  • ステータスなし:データ不足(約3週間のデータが必要)

 ベースラインを下回っているときは疲労状態、上回っている場合はトレーニング量は多いが強度不足(低強度が多い)ことを示すことが多いです(あくまで目安です)。

リカバリータイム(回復)

リカバリータイム

リカバリータイムは、0時間~96時間(4日間)の範囲で表示される

 リカバリータイムは完全に回復するまでの時間を表し、アクティビティ後に更新されます。

 主にトレーニング強度を元に算出されるため、極端に強度が高いトレーニングを行ったり、短期的な負荷が高くなるとリカバリータイムは長くなる傾向があります。

 画像は高強度のスピードトレーニング直後に確認したもので、94時間と上限に近いリカバリータイムが表示されました。

 リカバリータイムは0になるまで完全に休息することを示しているのではなく、高強度のトレーニングが行えるまでの時間を表しています。

トレーニングレディネス

トレーニングレディネス

 トレーニングレディネスはリカバリータイムと似た指標で、トレーニングに対する準備を1〜100までのスコアで表します。

 画像は先ほどのリカバリータイム(94時間)と同じタイミングで確認したもので、疲労が溜まっているためスコアは12と非常に低い値を示しています。

 トレーニングレディネスはアクティビティだけでなく、以下に示すようなライフスタイルも考慮に入れて総合的に判定しています。

  • 睡眠スコア
  • リカバリータイム
  • HRVステータス
  • 短期的負荷
  • 過去3日間の睡眠、ストレス

 アクティビティ後に更新されるリカバリータイムと異なり、トレーニングレディネスは睡眠時も含めて3日間継続して装着しなければ表示されません(日中少し外すくらいは大丈夫です)。

高度適応・暑熱適応

暑熱適応

 高度適応・暑熱適応はそれぞれ高地・高温にどれほど適応しているかを0〜100%で表します(数値自体が何を表しているかは明確な記載はありません)。

 それぞれ、生活高度が800m以上の場合、気温22℃以上でトレーニングした場合に更新されます。

 画像では気温が下がり始めた10月頃から気温22度未満でトレーニングを行う機会が増え、暑熱適応が低下し始めていることが分かります。

 先ほど紹介したトレーニングステータス・VO2maxは、高度適応・暑熱適応を考慮に入れて算出しています。このため、高度適応・暑熱適応のみでトレーニングに活用する機会は少ないです。

まとめ

 トレーニングステータスには様々な指標があり、自身のコンディションを客観的に様々な観点で分析することに役立ちます。

 これらの指標はトレーニング強度や睡眠状態を元に分析されますが、特に心拍計の精度を上げることで正確に分析することができます。

 ガーミンは安い買い物ではないので、今まで知らなかった・活用できていなかった指標があればチェックしてみてください。