ランニングの初級者・中級者・上級者・エリートの基準は?統計的に考察
ランニングの初級者・中級者・上級者・エリートの境界はどれくらいのタイムになるかを統計的に考察してみました。人によって様々な定義があると思うので、一つの考え方として見て頂ければと思います。
本記事における初心者~トップエリートの定義
上位 | 偏差値 | |
---|---|---|
トップエリート | 〜0.05% | 83〜 |
エリート | 0.05%〜0.1% | 80〜83 |
セミエリート | 0.1%〜0.6% | 75〜80 |
上級者 | 0.6%〜2.3% | 70〜75 |
中級者 | 2.2%〜15.9% | 60〜70 |
初級者 | 15.9%〜69.1% | 45~60 |
ファンラン・初心者 | 69.1%〜 | ~45 |
本記事では、ランナーのタイム分布が正規分布に従うと仮定し、初心者〜トップエリートを上のグラフ・表のように定義します。
ファンラン〜初級者の範囲が広いと思う方もいると思いますが、競技志向(タイム向上が目的)ではない方も多いという考えから広めに設定しています。
タイム分布を作成する上では母集団の決め方が重要になります。例えば母集団を日本人全体とすると、ランニングを行っている方は全体の10%程度しかいないので、走っている方は基本的に中級者以上となってしまいます。
このため、本記事では母集団を「ランニング人口全体」と「陸上競技者」としたときの初心者〜トップエリートのタイム基準を考察することにしました。
ランニング人口全体
一般ランナーのフルマラソンのタイム分布
母集団をランニング人口全体としたときのタイム分布は、フルマラソンのゴールタイム(ネットタイム)から作成することにしました。
男子は横浜マラソン2019、女子は富山マラソン2019の結果を収集し、平均値・標準偏差を元に初心者〜トップエリートの基準となるタイムを算出しました。
(比較的きれいなデータが集まったのでこれらの大会を選定しています。制限時間が30分違いますが大目に見てください。)
フルマラソン以外の種目の基準については、World Athleticsが作成したScoring Tableという統計的に作成された記録の相関表を用いて推定することができますが、母集団に偏りがある(と思っている)ため使用しませんでした。
具体的には、母集団の競技レベルが幅広い(陸上未経験が多い)フルマラソンの記録が、トラック競技(陸上経験者が大半)よりも甘く評価される傾向があります。
例えば男子フルマラソンの日本記録である2時間04分56秒と同価値の記録は、Scoring Table上では10000mが26分47秒、5000mが12分50秒、1500mが3分29秒と日本記録を大きく上回る記録となってしまいます。
このため、フルマラソン以外の種目の基準については、本サイト独自に作成したタイム相関表から推定することにしました。
フルマラソンの記録を分析した結果、男子は平均4時間43分18秒、標準偏差が46分59秒でした。女子は平均5時間17分34秒、標準偏差が53分16秒でした。
これより、ランニング人口全体を母集団としたときの初心者〜トップエリートの基準となるタイムは以下のようになりました。
男子
フル | ハーフ | 10000m | 5000m | 3000m | 1500m | 1000m | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
トップエリート | 2:08'15 | 1:01'59 | 28'19 | 13'41 | 7'52 | 3'43 | 2'19 |
エリート | 2:22'21 | 1:08'30 | 31'09 | 14'59 | 8'35 | 4'02 | 2'32 |
セミエリート | 2:45'50 | 1:19'10 | 35'43 | 17'03 | 9'44 | 4'33 | 2'51 |
上級者 | 3:09'20 | 1:29'46 | 40'10 | 19'03 | 10'50 | 5'25 | 3'24 |
中級者 | 3:56'19 | 1:50'39 | 48'53 | 22'53 | 12'57 | 6'00 | 3'47 |
初級者 | 5:06'47 | 2:21'30 | 1:01'28 | 28'21 | 16'00 | 7'20 | 4'38 |
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女子
フル | ハーフ | 10000m | 5000m | 3000m | 1500m | 1000m | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
トップエリート | 2:21'45 | 1:08'13 | 31'02 | 14'56 | 8'34 | 4'02 | 2'32 |
エリート | 2:37'44 | 1:15'31 | 34'09 | 16'21 | 9'21 | 4'22 | 2'44 |
セミエリート | 3:04'22 | 1:27'32 | 39'14 | 18'38 | 10'37 | 4'57 | 3'06 |
上級者 | 3:31'00 | 1:39'26 | 44'13 | 20'55 | 11'52 | 5'30 | 3'27 |
中級者 | 4:24'17 | 2:02'58 | 53'57 | 25'06 | 14'11 | 6'32 | 4'07 |
初級者 | 5:44'12 | 2:37'36 | 1:07'53 | 31'07 | 17'34 | 7'58 | 5'03 |
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フルマラソンの基準を見ると、中級者の基準は男子がサブ4、女子がサブ4.5程度となりました。また、上級者の基準は男子がサブ3、女子がサブ3.5程度となりました。
セミエリートの基準は男子が2時間45分、女子が3時間程度となりました。セミエリートはしっかりとトレーニングを積み、スピード練習も行わないと達成が難しいレベルです。
エリートの基準は男子が2時間20分、女子が2時間40分程度となりました。一気にレベルが上がり、陸上経験者でも達成難易度は高いです。
トップエリートの基準は男女ともに日本記録に近いタイムになりました(2023年4月現在のフルマラソンの日本記録は男子が2時間04分56秒、女子が2時間19分12秒)。
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陸上競技者
陸上競技者の男子5000m、女子3000mのタイム分布
陸上競技者は主にトラック競技に取り組んでいる選手を対象とし、タイム分布は高校生陸上部の大会結果(男子5000m、女子3000m)から作成することにしました。
高校生の大会結果とした理由は、中学生はタイムが成長過程であり、逆に大学生はでレベルの高い選手ほど競技を続ける傾向があり母集団が速い側に偏るためです。
男子5000m、女子3000m以外のタイムは、先ほどと同様に本サイトで作成したタイム相関表から推定することにしました。
東京都高体連春季陸上競技会の2~3年間の記録を分析した結果、男子5000mは平均17分29秒、標準偏差が1分09秒でした。女子3000mは平均11分42秒、標準偏差が56秒でした。
これより、陸上競技者を母集団としたときのト初心者〜トップエリートの基準となるタイムは以下のようになりました。
男子
フル | ハーフ | 10000m | 5000m | 3000m | 1500m | 1000m | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
トップエリート | 2:07'41 | 1:01'43 | 28'13 | 13'38 | 7'51 | 3'42 | 2'19 |
エリート | 2:11'23 | 1:03'26 | 28'58 | 13'59 | 8'02 | 3'48 | 2'23 |
セミエリート | 2:17'43 | 1:06'22 | 30'14 | 14'34 | 8'21 | 3'56 | 2'28 |
上級者 | 2:24'11 | 1:09'20 | 31'31 | 15'09 | 8'41 | 4'05 | 2'33 |
中級者 | 2:37'22 | 1:15'21 | 34'05 | 16'19 | 9'19 | 4'22 | 2'44 |
初級者 | 2:57'42 | 1:24'33 | 37'59 | 18'04 | 10'18 | 4'49 | 3'01 |
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女子
フル | ハーフ | 10000m | 5000m | 3000m | 1500m | 1000m | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
トップエリート | 2:22'49 | 1:08'42 | 31'15 | 15'02 | 8'37 | 4'03 | 2'32 |
エリート | 2:28'34 | 1:11'20 | 32'23 | 15'33 | 8'54 | 4'10 | 2'37 |
セミエリート | 2:38'12 | 1:15'43 | 34'14 | 16'23 | 9'22 | 4'23 | 2'45 |
上級者 | 2:47'49 | 1:19'38 | 36'05 | 17'13 | 9'50 | 4'35 | 2'52 |
中級者 | 3:07'47 | 1:29'04 | 39'53 | 18'55 | 10'46 | 5'01 | 3'09 |
初級者 | 3:38'26 | 1:42'44 | 45'36 | 21'27 | 12'10 | 5'38 | 3'33 |
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当然ながら、母集団をランニング人口全体とした時よりもタイムは底上げされて厳しい基準となりました。
レベルが高い側の基準がさらに細分化されたような形となり、陸上経験者はこちらの基準の方がしっくりくる場合も多いのではないかと思います。
基準の目安を高校総体の県大会突破のラインで例えると、地域によるものの男子が上級者~セミエリート、女子が上級者付近になることが多いです。
また、実業団選手の目安は、男子がエリート以上、女子がセミエリート(もしくは上級者)以上になると思います。箱根駅伝に出場する選手もエリート以上が目安です。
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最後に
本記事では初心者〜トップエリートを上位からの割合(偏差値)で定義し、タイム分布から基準となるタイムを算出しました。
その結果、例えば母集団をランニング人口全体とした場合の中級者の基準は、男子がサブ4、女子がサブ4.5程度となりました。
本記事で得られた基準のタイムに納得がいかない方も当然いると思いますが、母集団(タイム分布)・初心者〜トップエリートの定義によって基準のタイムはいくらでも変わってきます。
また、母集団の選定において年齢を考慮に入れていないため、年齢が上がるほど不利になります。
今回得られた結果は私が決めた定義の元で算出された基準タイムであり、参考程度に自身のトレーニングや走力の把握に役立てて頂ければと思います。
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