【ランナー必見】VDOTについて解説!VO2Maxとの違いは?
マラソンやトラック競技のトレーニングを行う中で、VDOTを聞いたことがある、または既に活用している方は多いと思います。
VDOTはダニエルズのランニングフォーミュラで紹介されている指標で、VDOTを使った練習メニューの組み立て方や考え方が詳しく解説されています。
本記事ではVDOTについて紹介するとともに、混同されやすいVO2Maxとの違いを解説しようと思います。
目次
VDOTとVO2Maxの違い
VO2maxとは
まずはVO2Max(最大酸素摂取量)について知る必要があります。VO2Maxは1分間に1kgあたりに取り込める酸素の最大量(ml/kg/min)を表します。
VO2maxが高いほど速いペースが維持できるようになるため、VO2maxが高くなれば走力の向上が期待されます。
VO2Maxの平均は、ガーミンユーザー(40〜44歳)のデータを参照すると男性が49ml/kg/min、女性が43ml/kg/min程度です。
この数値はある定期的にトレーニングを行っている方が母数に多く入るため、ランニング習慣のない日本人全体の数値はさらに低いです。
VO2Maxをできるだけ正確に測定するには、呼気採取用のマスクをつけながらトレッドミルを走る(またはバイクを漕ぐ)ことで算出してもらうことが一般的です。
ただし料金がかかる上に専用施設が必要なため、ガーミンなどVO2Max予測機能があるウォッチで簡易的に測定している方が多いです。
VO2maxについては、以下の記事でさらに詳しく解説しています。分布も紹介しているので、気になった方は参照してみてください。
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VDOTとは
VO2maxと走力はある程度の相関がありますが、走力は乳酸性閾値・ランニングエコノミーなど他の要素にも影響されます。
このためVO2maxの数値が同じだとしても、マラソンのタイムは異なることはよくあります。
このようにVO2maxだけでは走力の比較ができないため、単純に走力を数値化できるようにVDOTが考案されました。
車で例えるならVO2maxがエンジン(出力)に相当し、どれだけのエネルギーを生み出せるかを表します。
ただし高性能なエンジンを備えていたとしても、燃費が悪ければ速いペースを維持することができません。
これに対してVDOTは燃費なども考慮し、最終的な走行性能を表したような指標と考えることができます。
VDOTは自分のレースタイムから算出されるため、VO2Maxよりも簡単に知ることができます。
VDOTを活用することで、レースタイムの予測やトレーニング時のペース設定を知るために役立ちます。
VDOTの算出方法
VDOT Running Calculator
VDOTはこちらのサイトから算出することができます。やり方は距離とタイムを入力し、Calculateボタンを押すだけです(Paceは自動的に算出されます)。算出されたVDOTは右上に表示されます。
ここで一つ注意点があって、フルマラソンのタイムからVDOTを算出することは避けたほうが良いです。
VDOTはもともと呼吸系の指標であるVO2Maxを元にして作られたパラメータのため、有酸素能力をしっかりと使い果たすことを想定しています。
しかし、多くの方はフルマラソンで呼吸が苦しくなって失速するというより、エネルギー不足で失速していると思われます。
つまり、30kmの壁のような現象は考慮されておらず、ここで失速することでVDOTの予測タイムと誤差が生じてしまいます。
このため、フルマラソンでVDOTを算出すると、本来のVDOTよりも低く出てしまうことが多いです。
VDOTを精度良く推測するために、ハーフマラソン以下の距離で、記録が安定している種目を選ぶことをおすすめします。
レースタイム予測への活用
VDOTを用いることで、1500m以上のレースのタイム予測を行うことができます。
1500m以下の距離についてタイム予測をしたい場合は、以下の記事で相関表を作成したので参考にしてみてください。
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まずは、自身のVDOTを確認します。ここでは、私が最も得意な1500mで算出してみました。
次にEquivalentタブを選択します。すると、以下のように算出されたVDOT(= 74.8)におけるタイムが一覧が確認できます。
ざっくりで良いならこれで予測できたことになりますが、算出に利用した種目(この例では1500m)から距離が離れるほど精度は落ちてしまいます。
実際、私の10kmの自己記録は30分53秒ですが、予測タイムは29分18秒と大きくずれています。
さらに精度良くレースタイムを予測するには、VDOTは2種目以上で算出する必要があります。
私の場合、3種目で算出してみたところVDOTは以下のようになりました。
- 1500m(3'44"):74.8
- 5000m(14'30"):72.4
- ハーフ(1:09'31):68.7
私は1500mが最も得意なので、1500mのVDOTが最も高くなり、距離が長くなるほどVDOTは低下しています。
このように、自身が得意とする種目のVDOTが最も高く、そこから距離が離れるほどVDOTが低下することが一般的です。
この例で10000mのレースタイムを予測したい場合は、まずは10000mのVDOTがどれくらいになるかを予想します。
ここでは5000mとハーフマラソンのVDOTの間に入ることが予想されるので、10000mのVDOTは70.5前後になるだろうと見積もりました。
ここからは力技ですが、10000mのタイムを色々と打ち込み、VDOT=70.5になるタイムを探します。
この結果、VDOT=70.5となる10000mのタイムは30分49秒であることが分かりました。自己記録(30分53秒)にかなり近づきました。
先ほど1500mのVDOTだけから予測したタイム(29分18秒)よりも、精度が大きく向上しています。
このように、レースタイムを精度よく予測するためには、最低2種目以上の結果からVDOTを算出し、自身のVDOTの傾き(高く出る方向)を知っておく必要があります。
トレーニングへの活用
Trainingタブを見ると、Easy, Marathon, Threshold, Intreval, Repetition, Fast Repsという6つの項目があり、それぞれにタイムが表示されています。
これは、練習のタイプによって、それぞれペースをどれくらいにすれば良いかを示したものです。
詳しくは以下の心拍数ゾーンに関する記事で紹介しているので、本記事では簡単な紹介に留めます。
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Easy (Eペース)
普段のジョギングのペースで、VDOTでは最大心拍数の65~79%と定義されています。ただし、79%付近はジョギングとしては速く感じる方が多いと思います。
このため、私は速くても最大心拍数の70%以下(ハーフのレースペース+1min/km前後)することが多いです。
(ただし個人差はあり、疲労が溜まらないのであれば最大心拍数の79%までペースを上げても問題ありません。)
イージーランの目的は高強度トレーニングの土台を作ることです。怪我の防止にもつながるため、Eペースのトレーニングが走行距離の70~80%を占める必要があります。
また、余力があればジョギングの後に流し(120mくらいの快調走)を入れると刺激が入り効果的です。
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Marathon (Mペース)
文字通りマラソンペースを指します。ただし、実際のマラソンペースというよりは、自身がフルマラソンで理論的に出すことができる最速のペース、といった方が近いです。
つまり、トラブルなく有酸素能力を出し切ることができれば、理論的にはMペースでフルマラソンを走り切ることができるといえます。
Mペースの効果はEペースと大きくは変わりませんが、フルマラソンのレースペースに慣れることできることが大きなメリットになります。
Mペースでロング走を行うことで、例えば25kmまで余裕をもって走れれば自信につながりますし、完走できなければ足りない点を見つけることにつながります。
トラック競技の選手は、冬季などの鍛錬期において、中強度のトレーニングとしてMペースの割合を大きくすることが多いです。
Threshold (Tペース)
LT走のペースです。辛すぎず楽すぎず、でも長くは走りたくない強度で、ハーフマラソンのペース前後となることが多いです。
LTペースとも呼ばれることが多く、その名の通りLT(乳酸性閾値)の向上が目的です。
LTを向上させることで、最大出力(≒VO2max)が変わらなくても、効率的にエネルギーを消費できるようになることでパフォーマンスが向上します。
中距離選手にとっても長距離選手にとっても重要なトレーニングで、普段の練習にバランスよく取り入れる必要があります。
世界のトップ選手が積極的に取り入れていることからも、LT走の重要性は多くのランナーに認識されつつあります。
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Interval (Iペース)
5000mのレースペース前後の強度です。王道の1000mのインターバルは、Iペースのトレーニングになります。
目的はVO2maxの向上で、自身の最大出力・キャパシティを底上げするイメージです。
強度が高いトレーニングのため基本はインターバルで行い、できるだけIペースで走っている時間を稼ぎます。
疾走区間の距離は合計で5000m〜6000m前後とすることが多いです。
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Repetition (Rペース)
1500mのレースペース前後の強度で、中距離の選手が多く行うトレーニングです。
目的は無酸素能力の向上・ランニングエコノミーの改善です。
スピードの底上げだけでなく、高速走行時のフォーム改善も期待され、効率的に走ることができるようになります。
200m〜600mのショートインターバル(レペティション)として行い、強度が高いためレストは2〜5分程度とすることが多いです。
Fast Repetition (FRペース)
800mのレースペース前後の強度です。中距離のトレーニングで、長距離の選手が行うことは少ないです。
Rペースと同じく距離は200m〜600mとすることが多いですが、非常に強度が高いためレストは5分以上とることが多いです。
まとめ
VDOTはレースタイムから算出する値(=走力)で、レースタイムの予測やトレーニングのペース設定に役立ちます。
VDOTは2種目以上から算出しておき、その傾き(距離に対する変化度合い)を把握しておくと、より正確に活用することができます。
本サイトでは、VDOTとは異なる独自の計算式によりタイム相関表を作成しているので、VDOTと合わせて参考にしてみてください。
▼タイム相関表はこちら!