【心拍計】胸ベルト(電気式) vs 腕時計(光学式)│同時に測定して精度を比較
ランニング中の心拍数を胸ベルト型(電気式)・腕時計型(光学式)で同時に測定し、夏・冬でそれぞれ精度を比較してみました。各測定法のメリット・デメリットも紹介します。
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各測定法の仕組みと特徴
(左)HRM-Pro Plus (右)Forerunner 965 (画像の引用元:garmin.co.jp)
胸ベルト型(以下、電気式)も腕時計型(以下、光学式)も心拍に応じた信号(波形)から心拍数を推定することは同じですが、信号の取得方法が異なります。
電気式はベルトの内側に配置された2つの電極を胸に密着させ、心拍から直接電気信号を取得します。
一方で、光学式ではデバイスの裏側から手首に光を照射し、脈拍からの反射光の強弱に応じて決まるPPG信号を取得します。
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どちらも得られた信号から動作成分などのノイズを取り除いた後に心拍数を推定する点では同じですが、精度は電気式の方が高いです。
理由は2つあり、1つ目は心臓に近い部分に配置され、直接心拍を検知できるためです。光学式では手首から脈拍を検知するため、胸から心拍を取得する電気式よりも心拍成分が小さいです。
2つ目は運動中の変位が腕よりも小さく、信号内の動作成分が小さい(ノイズが小さい)ためです。運動強度が高い場合、光学式では精度が大きく落ちることがあります。
このように精度は電気式の方が高いですが、人によっては装着感が気になるかもしれません。また、基本的にオプションとして購入する(単体では使えない)ため追加費用がかかります。
心拍数測定結果
ガーミンを2台使用して、電気式・光学式で同時に心拍数を測定し、夏・冬でそれぞれ精度を比較してみました。
左手はForeAthlete 245を用いて光学式で心拍数を取得し、右手は胸ベルト型心拍計(HRM-Pro Plus)と接続したForerunner 955を用いて電気式で心拍数を取得しました。
光学式では精度ができるだけ高くなるように、手首から指4本分ほど離れた位置で皮膚に密着させた状態でウォッチを装着させました。
ジョギング
夏(気温31℃)
6.3kmjog(夏、気温31℃)
まずは夏のジョギングでの測定結果です。グラフは赤線が電気式、緑線が光学式で測定した心拍数[bpm]です。青線はペース[/km]を表しています。
広めのペースで確認したかったため、キロ7くらいのペースから始め、最終的にキロ4を切るくらいのペースまで上げました。
電気式(赤線)の方がブレているような印象を受けますが、サンプリング周期が短くそのように見えるだけです。
開始4分後の信号で止まったところや、4分半ペースを超えてから10bpm程の誤差が生じたタイミングはありますが、全体を通して心拍数がほぼ一致しているようにみえます。
誤差が生じたとしても大きくはなく、しばらくすると正しい心拍数(電気式と同じ心拍数と仮定)に戻っているため、使用上ほとんど問題ないといえます。
冬(気温7℃)
8.2kmjog(冬、気温7℃)
次に冬のジョギングです。キロ4〜5のペースで8kmほど走りましたが、身体は温まらず腕は完全に冷え切っていました。
可能な限りウォッチを密着させた状態で装着しましたが、グラフから分かるように電気式と光学式の心拍数が一致しない領域が増えました。
このペースでは毎回130〜140bpm前後に落ち着くので、光学式心拍計がずれているのは確実です。
特に前半の精度が悪く、一番ひどいところでは15bpmほどの誤差が見られます。
後半は身体が温まってきたからか精度が良くなりましたが、今回は良い方で精度が戻らないことの方が多いです。
悪いときは精度がどんどん悪化していき、最大心拍数を超えてしまうこともあります。
このようなときは誤差が大きくなるというよりは心拍成分を検知できなくなっており、心拍数ではなく動作成分などのノイズを拾っています。
つまり、精度が悪いときは少しずれるのではなく、極端に精度が落ちてしまいます。厄介なのは心拍成分が検知できないときは高い側に心拍数が振れてしまうことが多いことです。
これにより運動強度が実際よりも高く判定されたり、VO2maxが下がってしまうなどのデメリットが生じます。
私が特に気温の影響を受けやすい体質なのかもしれませんが、おおよそ15℃を下回ると心拍成分を検知できない現象が起き始め、10℃以下では大半の場合で検知できなくなります。
インターバル
夏(気温27℃)
(1600m+1000m+400m)×2(夏、気温27℃)
さらに高い強度で確認するために、真夏の400mトラックで(1600m+1000m+400m)×2セット(レスト400jog)を行いました。
ウォーキングやジョギングとは異なり、電気式と光学式が大きく異なる値を示すタイミングが何点かみられます。
特に1セット目の400m(≒1500mのペース)では光学式では全く計測できておらず、1600mの心拍数よりも低い値を示してしまいました。
また、インターバルの開始・終了時では光学式の心拍数が遅れており、急なペース変化に弱いことが分かります。
これは急な動作変化(腕の振り方など)があったことで、信号の処理方法の変更が追いついていないためだと思われます。
それでも心拍数が追いついた後は、1600m(≒ハーフマラソンのぺース)と1000m(≒5000mのペース)では電気式とほぼ同じ値を示していて、スピード練習でもある程度は対応できることが分かりました。
冬(気温11℃)
1600×4(冬、気温11℃)
次に冬のスピード練習です。1600m×4本(レスト400jog)を行いました。
結果は見ての通り全くといっていいほど測定できておらず、1本目から心拍成分を見失ってしまいました。
レストに入っても心拍数が落ちなかったり、落ちたとしても再度スピードを上げたら心拍が戻らなかったりしています。
冬のスピード練習は他にも何度か試してはいますが、特にインターバルでは測定できないことが大半です。
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胸ベルト型心拍計は必要?
心拍数を比較した結果、少なくとも夏場は5000mのレースペースまでであれば光学式心拍計でも精度良く測定することができました。
ただし冬場はジョギングペースでも誤差が生じ始め、インターバルでは全くと言っていいほど測定できませんでした。
心拍数を正しく計測できればトレーニングの強度や自身のコンディションを把握することができ、オーバーワーク・怪我を防ぐことができます。
さらには、ガーミンなどのデバイスからフィードバックされるトレーニングステータス(短期的負荷、負荷バランス、VO2maxなど)の精度が上がります。
夏場に精度の良い心拍数データを蓄積したとしても、冬場の精度の悪いデータを混ぜてしまうのは少しもったいないです。
光学式心拍計だけでも参考にはなりますが、高い精度を求めるなら胸ベルト型(電気式)心拍計が必須といえます。
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まとめ
胸ベルト型(光学式)・腕時計型(電気式)を比較した結果を以下にまとめます。
- 電気式は胸から直接心拍を取得するため精度が高い
- 夏場は光学式でもそこそこの精度で測定できる
- 冬場は精度が一気に落ちる(特にインターバル)
- 心拍数を利用したトレーニングには電気式がおすすめ