8分台ランナーによる!3000mSCの練習法・跳び方・スパイクを紹介

最近3000mSCが人気になってきていて、一度やってみたいと思ってる人も多いと思います。
私は2011年に初めて出場してから10年以上続けており、出場したからこそ分かったことも多いと感じています。
そこで本記事では、3000mSCの練習法・跳び方・スパイクなどについて詳しく紹介していきます。
目次
3000mSCの練習方法
基本的には1500m~5000mと同じ
タイトルに「3000mSCの練習法」という文字を含めはしましたが、そこまで特別な練習はありません。
1500m~5000mの練習と大きくは変わらず、以下のような定番ともいえるメニューで良いと思います。
- 1000×5 (レスト400jog)
- 1600×5 (レスト200jog)
- 8000+1000 (レスト10分)
- 400×6 (レスト400jog)
1500mと5000mのどちらに近いかといわれると、個人的には5000mに近いスタミナが必要な競技だと思います。
3000mと比較しても、理論的には走行時間が長くなる3000mSCの方が有酸素寄りの競技になるはずです。
中距離を専門としている自分からすると、1500mよりも2倍以上の走行時間となる3000mSCは長すぎるくらいに感じます。
余裕を持って走っていてもラスト1〜2周で足が止まることが多いので、トレーニングの量が重要であることは間違いないと思います。
事実として、3000mSCのトップ選手は、どちらかといえばスタミナ寄りの選手が多いです。
ただし1500mを走っても3分40秒は切ってたりするので、スピードが全く不要とはいえません。
どちらも重要ですが、基本的には5000mの練習をして、スピード・スプリントを入れる機会を少し増やす程度がベストだと思います。
詳しい練習メニューについては別の記事で詳しく紹介しているので、こちらを参照してください。
トレーニング・シューズ記事のリンク
800m | |
---|---|
1500m | |
5000m | |
3000mSC | |
フルマラソン |
タイム予測
普段の練習と大きくは変わらないと書きましたが、3000mSCを走ったことがなければ、1500m・3000m・5000mとの相関が分からないと思います。
あくまで私の経験則ですが、ハードリングミスがない場合、3000mSCのタイムは以下の式から予測することができます。
5000mのタイム[s] × 2/3 - 40
または
3000mのタイム[s] + 40
例えば5000mのタイムが16分00秒(=960秒)の場合では
960 × 2/3 - 40 = 600[s]
となるため、10分00秒(=600秒)で走れると予測できます。そのため、3000mSCで9分台を目指したい場合は、5000mで16分00秒を目指す強度とすれば大丈夫です。
ハードリング
3000mSCに慣れていない場合、タイムを短縮するために最も効くのはハードリングです。
ハードリングに向けてバネを鍛えることも重要ですが、まずは跳ぶ場数がハードリング技術の向上への一番の近道だと感じます。
ハードリングになれることで足の合わせ方、蹴り出し動作、着地後の切り替えなどが無意識に無駄なく行えるようになります。
体がこれらの動作を覚えることでエネルギーロスを大きく低減し、結果的にタイム短縮につながります。
両足着地や、スキップのように蹴り出した足と着地時の足が同じ跳び方はもってのほかなので、まずは普通に跳べるようになることが最優先です。
跳び方は、普通のハードルは片方の足でハードルに軽く触れるように跳び、着地時の衝撃を和らげると良いです。
毎回足を合わせるとタイムロスになってしまうので、左右の足どちらでも跳べるように練習しておくのがベストです。
スパート時は足を着かずに跳んだ方が良いですが、慣れないうちは高く跳びすぎて無駄なエネルギーを使ってしまうので最初は練習不要です。
次に水濠ですが、まずは足の合わせ方になれる必要があります。ハードルの直前で足を合わせようとしても減速してしまうので、10mくらい前から足を合わせるのが良いです。

私は、8レーン外側のラインと3000mSCの走行ラインが交わる点を基準にして、そこから何歩でハードルまで行けるかを事前に確認しています。私のストライドでは、左足で基準点を通過すると蹴り出す足は逆の右足になります。
蹴り出すときは、上に跳びすぎると前に進む力が小さくなってしまうので、そのまま真っ直ぐ走るように蹴り出すと良いです。
難しいことは考えずに、蹴り出した後は逆の足を普通に下ろすくらいに考えると上手く着地できると思います。
その際、蹴った足と逆の足で水深20~30cmくらいのところで着地できるように跳ぶと良いです。水がない所まで跳んでも着地の衝撃をかなり受けてしまうのでおすすめできません。
レース本番
ラップ位置

外水濠の場合、s台数目のハードルの位置は、以下の式から求めることができます。
70 [m] (s = 1)
84.592s - 30.208 [m] (s >= 2)
上の式から計算すると、1000mのラップは12台目(984.90m)の15.1m先の位置になります。12台目は3周目の2台目(1500mのスタート位置の近く)のハードルです。
また、2000mのラップは24台目(2000m)ぴったりの位置になります。24台目は5周目の水濠なので、手動でラップをとるなら跳びながらボタンを押す必要があります。
ちなみに、日本の競技場の大半は外水濠ですが、内水濠の方がタイムは出やすいと言われています。
理由は大きく2つあり、1つ目は最初のハードルがない区間が長いためペースに乗りやすく、また精神的に楽なことが挙げられます。
2つ目は、水濠の走行区間が直線であるため、着地時のエネルギーロスが少ないことが挙げられます。
外水濠の場合はカーブを曲がりながら跳ぶことになり、着地からの切り替え動作が連続的ではないことがエネルギーロスになるイメージです。
記事執筆時、私の自己ベストは外水濠では8分52秒、内水濠では(非公認ですが)8分46秒です。
内水濠を走ったのは1回だけで、その時たまたま調子が良かっただけかもしれませんが、短く感じられ精神的に楽に感じられました。
ぺース配分
3000mSCは1周400mではないのでペースがわかりづらく、突っ込んでしまうことがよくあります。そのため、以下の表を参考にして1周のタイムとペースの関係を覚えておくと役に立つと思います。
1周のタイム | ペース | ゴールタイム |
---|---|---|
72"0 | 2'50"/km | 8'30"7 |
74"0 | 2'55"/km | 8'44"9 |
76"0 | 2'59"/km | 8'59"1 |
78"0 | 3'04"/km | 9'13"3 |
80"0 | 3'09"/km | 9'27"5 |
82"0 | 3'13"/km | 9'41"7 |
84"0 | 3'18"/km | 9'55"9 |
86"0 | 3'23"/km | 10'10"0 |
88"0 | 3'28"/km | 10'24"2 |
90"0 | 3'32"/km | 10'38"4 |
スパイクの選び方
3000mSCは毎周水濠で足元が濡れてしまうため、シューズで走ると滑って不利になってしまいます。そのためスパイクの使用が必須ともいえます。
ここでは3000mSCに適したスパイクの特徴と、特化型スパイクを紹介します。
着目ポイント
屈曲性・クッション性
3000mSCでは着地時の衝撃を吸収することは非常に重要です。そのため、ある程度の屈曲性とクッション性があるスパイクを選ぶ必要があります。
数年前にナイキの「ズームヴィクトリー3」という中距離用の硬いスパイクで3000mSCに出場したことがありますが、最後まで足が持ちませんでした。
最後の1周までは8分55秒を切るくらいのペースで走っていましたが、800mのラストのように突然足が動かなくなって最終的にジョギングみたいになってしまいました。

当時のレース履歴 (ガーミンコネクトより)
筋力がある方ではないので、繰り返しの衝撃に耐えきれなくなったのだと思います。
トップレベルの方であれば中距離スパイクでも走れてしまいますが、一般的には長距離用のスパイクから選んでおけば問題ないと思います。
排水性
スパイクの中に侵入してきた水を排水させるために、アッパーは粗めのメッシュになっていることが望ましいです。
3000mSC対応との記載があれば、排水性に優れたアッパーが使用されていると思います。
記載がなくても、メッシュに目視できるほどの通気孔が設けられていれば問題ありません。
ただし、中にはメッシュが細かくシートのようなアッパーが採用されていることもあるので、そのような場合は避けたほうが良いかもしれません。
ピンの長さと種類
3000mSCだからといって特別なことはなく、普段使用しているピンで問題ないと思います。
平行ピンでもニードルピンでも何回か走っていますが、タイムはほとんど変わらなかったので、使い慣れている方で良いと思います。
あえて気にするのであれば耐久面で、他の種目よりニードルピンは先端が丸くなりやすいので、気にする場合は平行ピンをおすすめします。
ネジの規格は統一されているので、例えばナイキのスパイクにアシックスの平行ピンを付けることも可能です。
特化型スパイク紹介
長距離用のスパイクについては以下の記事で紹介しているので、ここでは3000mSCに特化したスパイクのみを紹介します。
(実際は、3000mSC特化型スパイクよりも、スーパーフォームを使用した厚底スパイクが選ばれることが多いです。)
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ガンラップ3 (Asics)
- 定価(税込):¥18,000
- 重量(27.0cm):145g
- ピン:5本
- ミッドソール:FlyteFoam + Nylon Plate(Outsole)
アッパーに排水システムを設けた3000mSC特化型のスパイクです。
アウトソールのナイロンプレートは前足部のみに配置され、さらに左右に分割することで屈曲性が高められています。
ミッドソールにはシンプルなフォームであるFlyteFoamが採用されているため、FF Turbo(スーパーフォーム)を採用したメタスピードLD2を選ぶ方が多いです。

DスパートFX2
個人的には、前のモデルである「Dスパート」をよく履いていました。3000mSC(9分05秒)と5000m(14分30秒)で自己ベストを出した思い出のスパイクです。
キプラガット選手(当時倉敷高)も履いていて、8分19秒でゴールしていました。
ズームマンバ6 (Nike)
- 定価(税込):¥13,530
- 重量(27.0cm):132g
- ピン:5本
- ミッドソール:EVA + Pebax Plate(Outsole)
主流の厚底スパイクとは対照的に、昔ながらの最小限でシンプルなスパイクです。
薄底かつプレートの硬度が高くないため、屈曲性が高く着地時の衝撃を緩衝することができます。
ズームXは使用しておらずエネルギーリターンは高くないため、実際のところはドラゴンフライを選ぶ方が多いです。